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台湾の蔡英文総統が今年8月までに訪米する方針を固め、米国側と調整に入ったことが2月24日、分かった。複数の台湾当局関係者が明らかにした。来年5月に退任する蔡氏は政権の外交成果の集大成として訪米し、米台関係の緊密さをアピールする狙いだ。米台接近を嫌う中国の猛反発が予想され、米台双方で蔡氏による訪米の時期や形式などについて検討している。
実現すれば蔡氏の訪米は2019年7月以来。
関係者によると、現在浮上している蔡氏の訪米案は3つある。1つ目は母校の米コーネル大学が主催するイベントに招待され、講演する形だ。過去には元総統の李登輝氏が1995年、同大で講演した例がある。
2つ目は、米シンクタンクが主催するイベントに参加する形態となる。蔡氏はここ数年、オンラインで米有力シンクタンクが主催するシンポジウムなどで演説した実績がある。
3つ目は8月に予定されている南米パラグアイの大統領就任式に出席し、米国に立ち寄る案だ。パラグアイは台湾と外交関係を維持する14の国の一つ。蔡氏は前回2018年8月の大統領就任式にも出席した。
いずれの訪米形態でも米国側の要人と非公式に会談を行う予定だという。
米中だけでなく中台関係も悪化する中で訪米が実現すれば、「台湾は中国の一部」と主張する中国が厳しく反発するのは必至だ。昨年8月のペロシ米下院議長(当時)の訪台では中国軍が台湾海峡周辺で大規模な軍事演習を実施した。蔡氏が訪米すれば、中国が対抗措置に出る可能性もある。
台湾の呉釗燮外交部長(外相に相当)らは21日までに訪米し、複数の米国側の高官と非公式会談を重ねた。議題に蔡氏の訪米計画が含まれていたとされる。与党・民主進歩党の関係者は「台湾海峡付近で軍事的緊張が高まっており、いざというときに、米国が頼りになるかについて不安を覚えている人は少なくない」と述べた上で、「蔡氏の訪米が実現すれば、米国が台湾を重視していることが確認され、大きな安心材料になる」と話している。
「計画あれば発表する」 台湾当局
台湾の蔡英文総統の訪米に向けて、米台双方が日程や形式などを調整しているとの報道について、台湾の外交部(外務省に相当)は25日、「報道は臆測にすぎない」とのコメントを発表した。そのうえで「首脳の外遊は外交部の最も重要な仕事の一つであり、具体的な計画があれば、総統府と外交部は発表する」と強調した。
筆者:矢板明夫(産経新聞台北支局長)